文字について4
世界には文字のない言語が存在する。これらの言語を表記するために言語学者は既存の文字システムを借用し少し手を加えて「実体の模倣」により、新しい文字システムを作る。
ニューギニアやアメリカ先住民のためにラテンアルファベットをもとに新しい文字システムが作られた。トルコ語においては1928年に、ムスタファ・ケマル・アタテュルクのトルコ共和国政府により、もともとアラビア文字をもとに作られたオスマン文字を、ラテンアルファベットをもとに作ったトルコ文字に置き換えられた。
歴史上でも文字システムの実体の模倣は事例が多い。
キリル文字は9世紀にギリシアからスラブ地方に布教に来た聖キュリロスが、ギリシャ文字とヘブライ文字をもとに作りだした。
ゲルマン語最古の文書は4世紀ごろ現在のブルガリアで西ゴート族と暮らしていた宣教師ウルフィラス主教が作ったゴシックアルファベットで書かれている。このゴシックアルファベットもまた様々な文字を借用して作られていて、20がギリシア文字から、5つがローマ文字から借用し、2つがルーン文字から借用したか、ウルフィラス主教みずから考えたかのどちらかである。
作られた文字については先の時代の文字と比較すればどこから派生したかがわかる。
ミケーネ文明の線文字Bは紀元前1400年にクレタ島のミノス文明の線文字Aから作られている。
「銃・病原菌・鉄」第12章から